*照準眼鏡 / Telescopic sight [#j17721d9]
#author("2024-04-14T19:23:40+09:00","default:user","user")
*スコープ(照準眼鏡) / Telescopic sight [#j17721d9]

 対象の光像を拡大して、肉眼では困難な遠距離目標の照準、狙撃を可能とする最も一般的な光学照準器。
 スコープ内にはレティクル(Reticle)と呼ばれる十字線や点などの模様が描かれており、この模様から目標との距離や着弾点を見定めて照準を行う。
 対象の光像を拡大し、投影像に描かれた模様「レティクル(Reticle)」と重ね合わせることで肉眼による照準では困難な遠距離目標への精密射撃を可能とする最も一般的な[[光学照準器>照準器]]。
 [[小銃]]に装着するのが一般的だが、製品によっては[[機関銃]]や[[拳銃]]に装着可能なものもある。
 スコープ単体ではただの単眼鏡であり、スコープを銃に固定するスコープマウントが必須となる。かつては銃ごとの専用マウントが使われていたが、後に汎用性を持つ[[レールマウント>マウントレール]]とマウントリングを介して装着するようになる。マウントリングは汎用的にスコープをマウントレールに取りつけることのできる器具である((スコープのボディ自体にレイルマウントが加工されており、マウントリング不要で直接装着するスコープもある。))。

 ライフルスコープといえば狩猟用、戦場では狙撃用と、長距離射撃に用いられるのが当たり前の機器だったが、近年は、小型低倍率のACOGなどの近中距離用のスコープも多く見られる。
 それら小型スコープはどちらかといえば軍用に開発されたもので、もともと[[アイアンサイト>オープンサイト]]での照準に不安のある[[ブルパップ]]式の軍用銃などに装備させたものだった。しかし近年は、精密射撃はもちろん、錯綜した地形で遮蔽物に身を隠した目標を索敵するのに効果を発揮するということで、小型スコープを兵士たちのライフルに遍く装備させるケースが増えている。
 主に[[狙撃銃]]や[[重機関銃]]で用いられている装備だが、近年は、[[トリジコン ACOG]]などの小型低倍率の近中距離用スコープを主力歩兵銃に遍く装備させるケースが増えている。70年代、80年代には、もともと[[アイアンサイト>オープンサイト]]での照準に不安のある[[ブルパップ]]式の軍用銃で見られたケースだったが、精密射撃はもちろん、錯綜した地形で遮蔽物に身を隠した目標を索敵するのにも効果を発揮するため、近年は[[ダットサイト]]と並んで標準装備とする軍が増えている。

 概ね「大型の可変・高倍率(最大倍率が6倍以上)」の物と「小型の固定・低倍率(1.5-6倍)」の物に分かれる。前者はより長距離での精度を重視する狩猟・狙撃向け、後者は軽さや照準速度の速さの点から軍用ライフルで主に用いられる。

 スコープの光学諸元は一般的に「倍率x対物レンズ径」、「アイリリーフ」、「FOV(Field of View)」等が挙げられる。
 「倍率x対物レンズ径」は「4x32」(4倍固定倍率で32mmの対物レンズ)、「3.5-10x40」(3.5倍から10倍の可変倍率、40mmの対物レンズ)というように表記される。レンズ径はミリメートル(mm)単位であるが、省略されることが多い。スコープの基本性能を決める諸元であり、レンズ径/倍率で求められる「瞳径」が大きい程像を明るく感じる。ただし、レンズ性能が高ければ瞳径(対物レンズ径)が小さくとも十分な明るさを確保でき((人間の瞳径は暗い所でも7mm程度と言われており、これ以上の瞳径はムダになる))、レンズ径が大きいとスコープ自体が大きく重くなるというデメリットが生じるためレンズ性能・倍率・用途に応じた適切なレンズ径が必要となる。
 「アイリリーフ」は本来接眼レンズから目の距離のことを表すが、スコープの諸元値におけるアイリリーフは「ケラレ(像周囲に生じる黒い輪)」の生じない距離を意味する。本来遠すぎても近すぎてもケラレが発生するが、大抵のスコープの諸元値では近限界は省略され遠限界のアイリリーフ距離が記載される。また可変倍率式の場合、倍率によってもアイリリーフが変化する。
 なお、アイリリーフを上下左右の三次元的に拡大した要素は「アイボックス」と呼ばれる。中心からズレて除いた時どこまでケラレが起きずに覗けるかという要素であり、これが大きいと覗き込みのズレを許容できるため、ゴーグルや眼鏡など、かさばるアイウェアを着用したままでの照準が容易になる。
 「FOV」は像の視野の広さを表す。一定先の距離においてどれほどの長さが視野になるかで定義され、「○○m(ft)/100m(yr)」(=100m(yr)先の○○m(ft)の範囲が見える)というような表記がなされる。数字が大きい程像がより広い範囲を見渡せることを示す。また、スコープの視野は円錐状に広がっていくため、この視野の円錐の頂点角度をFOVとして表す場合もある。
 
 レティクルは十字線や点などの模様で構成されており、この模様から目標との距離や着弾点を見定めて照準を行う。レティクルはスコープ内のレティクル板に金属ワイヤーを貼り付けたりガラスエッチングを行うことで構成する。中心だけでなく距離や風の補正・検出のために補助線(点)も描かれ、場合によっては複雑な紋様となる場合もある。レティクル板の配置によってFFP(First Focal Plane/第一焦点面)とSFP(Second Focal Plane/第二焦点面)の2種類があり、前者は倍率が変化した時レティクルも拡大・縮小するもので、後者は倍率によらずレティクルサイズが一定である。両者には一長一短((FFP:どの倍率でもレティクルによる距離補正機能が利用できる。低倍率時にレティクルを見失う可能性がある。同等の性能を持ったSFPと比べ高価。SFP:低倍率時でもレティクルを見失いにくい。一定の倍率時でないとレティクルの距離補正が利用できない。同等の性能を持ったSFPと比べ安価。))があり、用途に応じて選択される。小型電球あるいはLED、トリチウムなどの光源によってレティクルを発光させることが可能なものもあり、レティクル全体や中心点を点灯させる((ただし電池式の場合はダットサイトと同様に電池切れという問題が、トリチウムの場合は放射線物質に関する法規制や、半減期による光量の低下といった問題が付きまとう))。

 スコープはズームする特性上視野が狭まり、またアイボックス(アイリリーフ)を持つため覗き込める角度や距離に制約が生じ、近距離での照準が難しい。このため、近年の小型軽量化の進んだダットサイトをスコープと平行に装備し、遠近両方に対応できるものも登場している((スコープ破損に対するバックアップの意味合いもある))。
 主な例としてはドイツ連邦軍で使用されている[[G36>HK G36]]のヘンゾルト製光学サイト&コリメーターサイトや米英軍のミニダットサイト((米軍特殊部隊や海兵隊はノブレックス社製DOCTERサイトやトリジコン社製RMRサイト等、DOCTERサイトは英軍も使用。))付きACOG等が挙げられる。スコープ用マウントリングに専用のボルトオンマウントや[[ピカティニーレール]]を備え、ダットサイトを装着可能としたものもある。
 欠点としては、追加したマウントとダットサイトの分重くなることと、スコープ上部にマウントした場合、ダットサイト側の照準線が高くなることが挙げられる。銃身を軸として斜めにオフセットして装備し、照準するさいは銃を斜めに傾けて使用する例もあるが、この方法なら照準線は低く保てるものの、スイッチング(持ち手の入れ替え)は困難になる。

 近年はLPVO(Low Power Variable Optic=低倍率可変スコープ)と呼ばれる遠近両用スコープも登場している。倍率は最大で4~8倍だが等倍視があるのが特徴で、近距離では等倍でダットサイトのように素早く照準し、遠距離では高倍側で精密な射撃をすることができるため、最大3倍程度のマグニファイヤ併用ダットサイトに比べて、一本で多様な場面に対応可能である。欠点としてはACOGのような倍率固定スコープより大きく、ダットサイトに比べて重いこと、最低倍率で等倍といえスコープであるために前述したアイボックスの存在がつきまとうこと、低価格品だとコストカットの為に最低倍率が1倍ではなく1.2倍など若干の倍率を持っている製品があることが挙げられる。
 
 狙撃手にとってはほぼ必須の装備である一方、環境によってはレンズの反射によって位置を知らせてしまうという危険性もある。メディア作品でもスナイパーに狙われている演出として「スコープの反射光」がよく使われる。
 このため、現実の狙撃手はスコープ上にカバーや布を被せたり、より進んだ装備としてARD(アンチリフレクションデバイス、反射防止装置)((ハチの巣のようなハニカム構造を対物レンズの先に取り付ける事で光の反射を防ぐ装置。エイムポイント社のキルフラッシュなど))や反射防止コーティングを施したレンズなどを用いる。

 余談だが、各種ブランドのスコープやダットサイトが実際にはブランドを持つ国と製造国が異なる所謂ODM((販売元のブランドで販売されるが、開発設計から製造まで委託を受けた業者が行う。))やOEM((開発設計はブランド元で行い、製造のみ受託業者が行う。))ということがしばしば見られる。こういった製品の製造国としては日本や中国、フィリピンなどが知られている。

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