*ショートリコイル / Short Recoil [#n4cc9b93]
 [[自動拳銃]]や[[機関銃]]など、自動式火器の作動方式の一つ。バレルとボルト(又はスライド)を結合し、一定距離ともに後退するというもので、反動利用の作動方式ではもっともポピュラーなもので、対応する言葉として『ロングリコイル』がある。
 自動式火器のもっとも単純な作動方式は[[ストレートブローバック>ブローバック]]だが、この方法では威力の大きい弾薬の場合、バレル内の発射ガスの圧力が十分に下がらないうちにボルト(スライド)が後退してしまい、後方に高圧のガスが吹き出すいわゆる「吹き戻し」によって、銃本体や射手を傷つけてしまう危険が高い。そこで、ガスが銃口側から十分に抜けて圧力が下がるまで薬室(チャンバー)を閉鎖してやる必要があるが、自動火器ではどこかの時点で閉鎖(結合、ロック)を解いて薬室を開き、排莢と次弾の装填をしなければならない。
 このロックを解除するタイミングで、『ロングリコイル』と、『ショートリコイル』の2方式がある。

 『ロングリコイル』の場合は、バレルとボルトは後退しきるまで結合されており、最後まで後退した後、まずバレルだけが前進、排莢。その後、ボルトが次弾をつかんで前進し再装填、発射準備が整う。ロックが解除されるまでにバレルが大きく(長く)後退するので『ロングリコイル』と呼ばれる。
 初期の機関銃などに見られた方式だが、バレルの移動が大きいためブレが激しく、命中精度が落ちるほか、発射速度もさほど上げられないなど、欠点が多い。そのため、現在は一部の[[オートマチックグレネードランチャー>擲弾発射器]]を除いて、ほとんど採用されていない。

 これに対して『ショートリコイル』は、バレルの後退を最小限に抑えてある。発射後、バレルとボルト(スライド)は結合したままわずかに後退するが、すぐにロックは解除(これでも、バレル内のガスは十分抜けている)。バレルはそこでいったん固定され、ボルトだけが空薬莢をつかんだまま後退、排莢。その後、今度は次弾を押し込みながら前進、再びバレルと結合して最初のサイクルに戻る。バレルの後退量が小さい(短い)ので『ショートリコイル』と呼ばれるわけである。
 バレルの動きが小さいためブレも少なく、発射速度もあげやすく、しかも構造も単純とメリットが大きい。また、ガスの吹き戻しがない分、ストレートブローバックよりも幾分、反動がマイルドになる。

 ショートリコイルは今では[[自動拳銃]]のもっとも一般的な機構だが、最初にショートリコイルが用いられたのは、マキシム機関銃である。マキシムはトグルジョイントロックを備え、ショートリコイルによって、このトグルロックを開放する仕組みだった。
 その後、ヒュ―ゴ ボーチャ―ドによってトグルジョイントと共にショートリコイルが[[ボーチャードピストル]]に取り入れられ、実用的な自動拳銃の先鞭をつけることとなる。しかし、これに用いられたトグルジョイント式を含め、当時のショートリコイルは複雑で、よりシンプルで真に実用的なショートリコイルは、[[ジョン ブラウニング>ジョン モーゼス ブラウニング]]のティルトバレル機構を待たなければならなかった。
 ティルトバレル機構は、リンクもしくはカムにより、後退するバレルを傾ける(ティルト/揺動)ことでスライドとのかみ合わせをリリースするというもので、『ブラウニング式』とも呼ばれる。[[M1911系>コルト ガバメント]]や、[[ハイパワー>FN ハイパワー]]といったブラウニングゆかりの銃器を始め、現在では世界中の自動拳銃で用いられる機構となっている。また機関銃では、同じくブラウニング氏設計の[[M1917>ブラウニング M1917]]や[[M2>ブラウニング M2]]で、ロッキングブロック式のショートリコイル機構が採り入れられており、こちらも一時代を築いた。
 その後、機関銃では[[ガスオペレーション]]が主流となっていったが、自動拳銃では今もってブラウニング式ショートリコイルが主流の座にある。製造元や時代によって多少のアレンジはあるものの、誕生した時点ですでに完成されていたメカニズムといえるだろう。
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