システムウェポン / System weapon

 システムウェポン、またはモジュラーウェポンとは、共通のコンポーネントを流用し、一つの銃火器を様々な仕様(コンフィギュレーション)に容易に変更することを可能とする設計である。
 共用可能なパーツを用いることで生産コスト・供給面での利点があるほか、操作や整備の手順を同じものに出来るため訓練のコストを下げられること、複数の銃を携行せずとも最小限の変更で近距離戦や遠距離戦に適した構成に変更可能であるなどの利点がある。

 システム・ウェポンの構想は意外にも古く、第一次世界大戦終了後のアメリカにおいて既にその原型が見られる。1930年代、米軍海兵隊の予備士官であるメルヴィン・ジョンソン少尉は、当時最先端の銃火器のコンセプトに影響を受けたマガジン給弾式の銃火器の開発を始める。第二次世界大戦中、1941年にはパーツと構造に多くの共用性を持つ、ジョンソン1941ライフルとジョンソン1941軽機関銃を完成させ、アメリカ海兵隊での試験を行った。海兵隊ではこれらの銃火器を高く評価し、採用要請を行ったものの、既に相当数のM1ガーランドを生産していた陸軍に反対を受けたため採用されることはなかった。
 
 突撃銃の登場後、生産性・整備性を上げるため、各パーツを他の同じ製品と同一規格を持つ部品とするモジュール化が進められていった結果、これらのパーツを個別に交換することでバレル長やストックの有無などを切り替えるという発想は自然に生まれてきた。
 第二次世界大戦の数年後、ソ連で開発されたAK47やNATO各国で採用されたFALといった第一世代の突撃銃は、軽機関銃を兼ねたヘビーバレルの長銃身モデル(それぞれRPK、FALO)をバリエーションとして持っており、バレル以外のパーツはほとんど突撃銃モデルと共用であった。システムウェポンはこうしたモデルに影響を受け、戦場での部品の取替えをより容易にしたものと言える。
 
 第二次世界大戦後、メルヴィン・ジョンソン少尉はアーマライト社で技術コンサルタントとして雇用され、ユージン・ストーナーらと共にモジュール式突撃銃AR10の設計を行った。AR10は高度なモジュール化によりバレルと機関部を占めるアッパーレシーバーと、給弾部とトリガーグループを含むロワーレシーバーへの分割・換装が可能となっていた。
 この設計を活かし、AR10はアッパーレシーバーを換装して短銃身を用いるカービンモデルや、ロワーレシーバーを換装することでベルト給弾を行う軽機関銃モデルへと変更する事が可能となった。
 後のコルト社に権利が移った小口径モデルAR15がM16として米軍に採用されると、コルトは同様の様々なカービンモジュールや軽機関銃モジュールを軍へと提案した。一方、AR15の設計を行ったユージン・ストーナーが新たに開発したストーナー63はより優れたモジュール性を備えており、米海軍SEALsが使用したことでその有用性は大いに実証された。

 こうした成果を受け、世界各国でもモジュール式のシステム・ウェポンの開発が進んで行く。特にH&K社では自社製品G3G36のバリエーションの大半をシステム・ウェポンとして共用可能な設計とした。同様の試みはステアー社のAUGなどでも実装された。
 だが一方で時代を経るにつれ、専門の狙撃銃や軽機関銃もまた生産技術や設計の進歩によりその性能を大きく向上しており、突撃銃の設計の流用でこれら専門の銃火器の性能に追いつくことは難しくなりつつあった。
 2000年代には米陸軍主導の大規模なシステムウェポン採用計画であるXM8計画が行われたが、やはり当時既に採用されていた個々の専門モデルの性能を上回ることは出来ず、計画は中止されている。

 しかし現在でも、とりわけ作戦行動中は十分な部品の供給を受けられず、機動力を重視した作戦を多く遂行する特殊部隊においては未だにその要求は根強い。特に米軍SOCOM傘下の各種特殊部隊では現在もAR15やSCARをベースにした様々なバリエーションモデルをパーツ交換によって運用している。
 21世紀に入ると5.56x45mm弾の性能面での限界が認知されたことで、使用弾薬の変更さえ可能としたシステムウェポンへの要求はますます高まり、様々なモデルが開発・運用されている。警察・法執行機関においても9x19mm.40S&W.45ACPといった複数種の弾薬を用いることが一般的となり、自動拳銃においてもそのような使用弾薬を変更可能なモデルも増えつつある。
 マグプル MASADAロビンソンアーマメント XCRといった新しい設計のシステム・ウェポンの登場にも影響を受け、現在では民間製品・軍用製品ともにモジュール式のシステム・ウェポンは市場においては一般的なものとなりつつある。 


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