サタデーナイトスペシャル / Saturday Night Special (SNS)

 いわゆる粗製、安物の小型拳銃の事。ジャンクガン(junk gun)とも呼ばれる。
 アメリカで、チンピラやマフィアが土曜日の夜に喧嘩(抗争ではない)を行う際、.25ACPや.32ACPなどの口径の安物銃を使った事から、犯罪などで押収される安物、粗製の拳銃のことをこう呼ぶようになった。その多くが小型であり、アメリカ一部の州では所持が禁止されているところもある。
 大抵は、日本では聞いたことのない中小・零細のメーカーが製造しており、造りはそろって、きれいに言えば実用本位、はっきり言えば粗製濫造。精度も品質も悪く、射撃競技やオフィシャルな用途には全く使えず、趣味性やコレクターズアイテムとしての価値も皆無である(「人を撃つため『だけ』の銃」と言う向きもある)。

 外野の人間から見れば、「なんでまっとうなブランドのメーカーの銃を使わない?」とも思えるが、良くも悪くも銃(とその脅威)が身近に存在するアメリカでは、低所得者層などが『自衛用』として購入するケースも多く、一定の需要がある。しかし、実際には自衛ではなく、『酔客同士の場末のけんか』などに使われてしまうことも少なくない。 また、高所得者層でも防犯にあまり金を掛けたくない人間が購入することもあるようだ。

 この種の銃が関わった最も大きな事件は、1981年3月30日の『レーガン大統領暗殺未遂事件』である。犯人ジョン ヒンクリー ジュニアは粗末な.22LRリボルバー(ローム RG14)とエキスプロッシブ カートリッジ?で、当時のロナルド レーガン大統領を銃撃。大統領の他、ジェームズ ブレイディ報道官を含む数名が被弾・負傷する惨事となった。

サタデーナイトスペシャルの例

外見モデル名説明
ローム RG14
ローム RG14ドイツのローム(Röhm)社によって製造された口径.22LRのダブルアクションリボルバー。RGはRöhm Gesellschaft(ローム社)の略。コストダウンのために全体が亜鉛ダイキャストを用いて造られている*1
シリンダーはフレームに固定されていて、装填時にはローディングゲートを開き、シリンダーを回しながら一発一発弾を込めていくという、昔のシングルアクションリボルバーと同じような手順が必要となる。また、排莢の時はさらに面倒で、銃に付属しているエジェクター ピン(ただの棒。SAAのエジェクターロッドのように銃自身の部品として固定されているのではなく、棒の片側にネジ山を切ってフレームにねじ込んであるだけ。)でシリンダーの銃口側から空薬莢を一つずつ突き出さなければならない。
姉妹モデルとして.22ショート・ロング口径のRG10やRG12等があり、いずれも低価格で販売されていた。
レイヴン MP-25アメリカのレイヴン アームズ(Raven Arms)社製。口径.25ACPのポケットオート。
値段は安いが、仕上げも品質もまずまずで、護身用としては及第点以上の出来映え。市場での評価もなかなか高く、200万挺を売り上げた『影のベストセラー拳銃』となった。
レイヴン社は1991年に倒産するが、MP-25はフェニックス アームズ社に引き継がれ、生産が継続された。
後に多くのコピー製品が各社から発売されたが、オリジナルの品質は一歩抜きんでているようだ。
PSA-25
プレシジョン・スモールアームズ PSA-25ブラウニング ベビーのコピー銃。ブラウニング ベビー自体はサタデーナイトスペシャルではないが、パテントが切れているため、数社で安価なコピー銃が製造されている。
品質は様々だが、オリジナルにはないステンレスモデルをリリースするなど、独自色を発揮するメーカーもある。
チャーターアームズ ブルドッグ
チャーターアームズ ブルドッグ(項目参照)

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最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • 連続射殺魔の永山則夫が使用したのも、ロームのリボルバーだった。RG10または12か? -- 2017-10-14 (土) 10:54:35
  • >ローム RG14 ……全体が亜鉛ダイキャスト
    亜鉛合金ダイキャストではないでしょうか? 軟らかい亜鉛はこのような製品には向かないと思います。 -- 大納言? 2017-12-09 (土) 21:39:22
  • さぁ、正確を期すならそうですが自明ですからねぇ。そもそも合金でなかったらダイカストなんか出来ませんし。
    近代以降合金でない金属材料の方が少ないですし、業務用途でも逐一「合金」と付けてるメーカは少ないですね。 -- 2017-12-09 (土) 22:43:03
  • 由来の所の文章に加筆しました。 -- 2017-12-30 (土) 06:23:11
  • よく分かりませんが「諸説あり」と追加したぐらいで逐一報告いただかなくても結構ですが... -- 2017-12-30 (土) 09:40:41
  • 2001年以降のサタデーナイトスペシャルについて知りたいです。2001年以降で知名度があるモデルや、現状について、どなたかご教示のほど、お願い致します。 -- 2019-05-20 (月) 22:38:49
  • 言うまでもなく、銃はデザイン費用が一番掛かりますので何も変わりません。サタデーナイトスペシャルなどという概念自体が2001年の時点で既に無いのです。銃の品質もアメリカの治安も良くなっていますから、高品質の銃が安く手に入るようになり、週末ごとにギャングの抗争があるなどということもありませんからね(そもそも極端に安い本当に粗悪な海外製品は1968年の銃関連法案以降アメリカ国内では全滅しています) -- 2019-05-21 (火) 06:48:51
  • 近年のサタデーナイトスペシャルといえる銃ですが、Hi-Point社の銃やPhoenix Armsの銃が安価という点では -- 2023-07-29 (土) 09:42:12
  • サタデーナイトスペシャルのような銃のようです、ちなみに100ドルというのは昔の話です、この言葉が生まれたのは60年代なら物価も全く違います、現状データベースサイトにも中古でも100ドルといったような安価な拳銃はないようです -- 2023-07-29 (土) 09:47:12
  • 調べて見ましたが、現在でも販売中のチャーターアームズの357 Magモデルの中でも安価な物が427ドル、1970年の100ドルが2023年今現在790ドルでした。100ドル以下だったのは間違いないようです -- 2023-07-29 (土) 10:04:30
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*1 RG14に限らず、SNSには製造コストの低い亜鉛ダイキャスト製の物が多数存在する

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