*グリーンチップ / green tip

 米軍の[[M249>FN ミニミ]]、[[M16A2>コルト AR15A2]]/A3/A4及び[[M4>コルト M4]]系に使われる制式弾薬、M855カートリッジのこと。主として対人、対非装甲目標に対して使われる。NATOにてサブキャリバーとして選定された、[[FN>ファブリク ナショナル]]社のSS109を採用したものである。

 M855ボールは底部以外をギルディングメタルで覆われた、いわゆるフルメタルジャケットで、内部は先端部の空洞、次にスチールの貫通体、そして鉛という順に構成されている。弾頭重量は62グレイン(約4グラム)。先端内部の空洞にスチールのコアという構成は、ソビエト連邦[[AK74>USSR AK74]]用弾薬である、5N7を参考に作られた。

 先端内部の空洞により、人体に命中するとタンブリング(倒弾)を起こしやすくして対人威力を高めつつ、それでいてスチールのコアにより、適度な貫通力も併せ持つ。初速が毎秒900メートルを超えるほどの高速なので、150[[ヤード>ヤード・ポンド法の単位]](約137メートル)以下の距離では、高確率で弾丸は人体内で砕け散り、かなりの対人威力を示す。

 ただし、ライフリングのツイストレートが異なる[[M16A1>コルト AR15]]以前のモデルでは、銃身内で弾丸が充分な旋転を得られず、飛翔距離が90メートルを超えると弾道が安定しなくなることから、誤用を避けるため識別に弾頭先端が緑色で着色されている。これが、M855がグリーンチップと呼ばれる所以となっている。この着色は、MIL-STD 709C弾薬色符号で定められたもので、旧弾薬以外にもM856曳光弾など各種弾薬との識別のためでもある。
 他にも環境の鉛汚染に配慮した、銅のジャケットに、コアとして円錐形のスチールと、次いでタングステンカーバイドで構成された、M855, Lead Freeというものもある。
 M855は20インチの銃身で発射した時に最も性能を発揮するように設計されており、短銃身のM4などから発射された場合、様々な問題を引き起こす。具体的には初速が落ちることで威力が低下したり、未燃化発射ガスが銃口付近で燃えることでマズルフラッシュが増大し、また同時に燃えカスが発生し、この燃えカスがガスチューブを介して機関部を汚す、と言ったことが挙げられる。2000年代初頭からM4カービンが多用されるようになると、これらの問題が顕著になった。
 狙撃用特殊弾薬Mk262への置換が検討されたものの、特殊弾薬のため高価であり、汎用性に欠けるという問題があり、M855とは置換はされなかった。

 現在、アフガニスタンでの戦訓を取り入れたM855A1 EPR(Enhanced Performance Round)、通称:ブラウンチップがアメリカ陸軍で開発され、近年中に従来のM855から新たなグリーンチップとして更新する予定。2010年6月からは、アフガニスタンの戦闘地域で、実際に運用を始められている。セミジャケットに、先端が露出した2段に積み重ねたような円錐形のスチールコアと、次いで銅、あるいはビスマスのコアによって構成されている。近年の低烈度戦争で問題となっていた、車のフロントガラスに対する貫通性の悪さ、遠距離射撃におけるパフォーマンスの悪さ、至近距離の対人射撃におけるフラグメント化(破砕)の失敗、といった問題が改善されている。また、従来のM855よりもマズルフラッシュと弾頭初速が抑えられている。また、鉛を使わないので環境にやさしいとされている。このM855A1は、14.5インチバレルの[[M4カービン>コルト M4]]に対して最適に調整されているが、より長銃身のM16やM249でも性能向上効果がある。
 
 海兵隊ではM855A1とは別のMk318 SOST(Special Operations Science and Technology)というカービン用弾薬が使用されている。これは、M855A1と同様ショートバレル向けに改良された弾薬で、M855A1のような性能向上を目指したものである。先端は鉛が露出し、残りは銅で覆われた「オープンチップ」を採用している(([[ハーグ陸戦条約]]における[[ダムダム弾]]に当たるかどうかはグレーゾーン))。こちらはM855と完全に置換されておらず、M249には旧M855が使われるなど、Mk318とM855の混用がされている。
 陸軍と海兵隊で全く違う弾薬が調達されている状況だが、2015年に、議会から弾薬を陸軍と海兵隊で統一して調達コストを下げるよう要請されている。
 これらの新弾薬の効果は目覚ましく、[[ダットサイト]]より精密な[[ACOG>トリジコン ACOG]]の普及も相まって、5.56mmの威力不足問題を払拭した。

 価格(アメリカ2005年度会計)
M855・・・0.26ドル
M855, Lead Free・・・0.38ドル


 ちなみにMIL-STD 709Cができる前は、緑色の着色をされた弾薬は、7.62×51mm デュプレックス弾(複合実包)M198 であった。
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