*ガトリングガン / Gatling Gun [#c3687aac]

 回転式多銃身型[[機関銃]](または機関砲)。1862年にアメリカの医師・リチャード ジョーダン ガトリング(Richard Jordan Gatling)氏が発明したため、この名が付いた。
 日本語では『ガトリング銃』、または『ガトリング砲』だが、響きがよいからか『砲』と呼ばれることが多いようだ。また、『バルカン砲』と呼ばれることもあるが、これは正確には[[口径20mm>口径]]のモデル([[GE M61]]とその改良型)のみを指す。

 基本的な原理は、銃軸の周囲に複数(多くは6本)の銃身を束ねて、外部の動力でこれを回転させながら、弾薬の装填・発射・排莢を連続的に行う。外部動力は何でも良いが、発明当時の動力は当然手動で、クランクを手で回して発射していた。発射速度はせいぜい毎分100〜200発程度だったが、当時としてはかなりの大火力で、1871年には南北戦争当時の北軍にも制式採用されている。メディア上でも、西部劇や南北戦争を扱った映画などでよくお目にかかる『定番アイテム』の一つだ。
 ガトリングガンは作動に外部動力を用いるため不発に強く(不発弾はそのまま外に強制排出される)、また銃身一本あたりの発射速度が低いので、過熱しにくく寿命も延びる利点がある。一方、そのメカニズム上、どうしてもサイズ・重量がかさんでしまうのが大きな欠点である。他にも、発射速度が上がるまでにタイムラグが生じる、銃口・銃身の装備位置が高い(伏せ撃ちができない)ので、射手の防護に問題がある、構造が複雑で整備性が悪い、といった弱点もある。
 元祖(古典的)ガトリングガンは、その後アメリカ以外にも各国で様々な改良型、バリエーションが作られた。しかし、上記のような弱点から、より軽量で扱いやすい反動利用・[[ガス圧利用>ガスオペレーション]]の単銃身型機関銃が発達してくると、次第に脇に追いやられていった。

 こうして一旦は廃れたガトリングガンだが、第二次大戦後、今度は航空機搭載用として復活してくる。外部動力に電気モーターなどを用いれば、毎分4,000〜6,000発以上という単銃身型では不可能な高発射速度も可能。空中戦では命取りにもなりかねない不発の発生にも強いと、ガトリングガンの数々のメリットは航空機用、あるいは対空射撃用としてはまさにうってつけだったのである。
 生まれ変わったガトリングガンは、口径20mmのM61を皮切りに、ヘリ搭載用に銃身を3本に減らして軽量化した[[M197>GE M61]]、[[7.62mm>口径]]の[[M134『ミニガン』>GE M134]]、口径30mmの[[GAU-8『アヴェンジャー』>GE GAU-8]]など様々なバリエーションが開発され、航空機や対空用に使用されている。また大量採用はされていないが、[[12.7mm>口径]]のGAU-19/Aも開発され、アメリカ軍の一部部隊で使用されている。
 一方ロシア([[旧ソ連>USSR]])では、口径7.62mmと12.7mmのガトリングガン『YakB』や、外部動力を用いない自力駆動型ガトリングガンが開発された。発射速度をさらに引き上げるため、一つの薬莢に二つの弾頭を組み込んだ特殊な12.7x107mm弾も製造されている。
 ただ、改良はされながらも、前述のような弱点は完全に克服されたわけではない。特に(使用する大量の弾薬も含めて)サイズ・重量面のデメリットは大きく、30mm口径のGAU-8ともなるとそのサイズはトラック並みで、もはや機関砲と言うより『大砲』のレベルである。そのためか、アメリカとロシアをのぞけば現在ガトリングガンを積極的に開発している国は意外に少なく、航空用機銃でも、ヨーロッパでは単銃身+回転弾倉型の『[[リヴォルヴァーカノン]]』の方が主流になっている。
 本家アメリカでも、(対空用をのぞけば)陸戦用・車載用などで使用する例は少なく、また一時、個人携行のガトリングガンも研究されたが、主として重量がネックになり結局は断念されている((アメリカでは[[.22LR>口径]]口径の携行型ガトリングガンを自作(!)してしまった強者もいると言うが、これはもう実用ではなく、完全に『趣味』の領域である。))。

 しかし、ガトリングガンのいかつい外観と圧倒的な火力はとにかく『絵になる』ので、現実とは裏腹に、個人携行型も含めてメディア上では大人気である。映画でも『[[プレデター]]』を皮切りに数々の作品に登場するようになったが、アニメやコミックならともかく、生身の俳優が持つとなると、もっとも小型のM134でも相当な負担になる。そのため、多くは動力源(バッテリー)や弾倉は俳優に持たせず、カメラに写らないようにバッテリーとコード、あるいは弾倉と給弾ベルトを隠しながら、外から電力・弾薬を供給するのが普通のようだ。

 なお、少し原理は違うが、やはり外部動力で作動する単銃身型の『[[チェーンガン]]』という機関砲もあり、メディア上では、なぜかガトリングガンと混同されることがある。

**主なガトリングガン [#j3c76eb3]
***アメリカ [#qf6e822a]
[[GE M61『バルカン』>GE M61]](口径20mmx102、6銃身)
[[GE M197>GE M61]](口径20mmx102、3銃身)
[[GE M134『ミニガン』>GE M134]](口径7.62mmx51、6銃身)
[[GE GAU-8『アヴェンジャー』>GE GAU-8]](口径30mmx173、7銃身)
GD GAU-12/U『イコライザー』(口径25mmx137、5銃身)
GD GAU-19/A(口径12.7mmx99、3銃身)
GD GAU-22/A(口径25mmx137、4銃身)
***ロシア(旧ソ連) [#s23c02e0]
GShG-7.62(口径7.62mmx54R、4銃身、Ka-29TB『ヘリックスB』搭載)
YakB 7.62mm (口径[[7.62mmx39>口径]]、4銃身)
YakB 12.7mm (口径[[12.7mmx107>口径]]、4銃身、攻撃ヘリMi-24『ハインド』搭載)
23mm ガトリングガン (形式不明、6銃身、戦闘攻撃機MiG-27『フロッガーD』搭載)
GSh-6-23(口径23mmx115、6銃身、Su-24『フェンサー』・MiG-31『フォックスハウンド』搭載)
GSh-6-30 (口径30mmx165、6銃身、MiG-27『フロッガー』搭載、[[AK-630]]・コールチクCIWSの機関砲)
***中国
14.5mm三管転管機槍
Hua Qing Minigun(口径7.62mmx54R、6銃身)
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