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*ヘルメット / Ballistic Helmet [#h8d2e89f]
 頭を保護するために着用する防具の一種。現代では工業用、防災用、交通用と幅広く存在するが、本ページでは戦闘用を中心に記述する。
 原型である兜自体は古代のシュメール文明から既に存在していたが、現在の物である歩兵用の軍用ヘルメットは、第一次世界大戦で砲弾や[[手榴弾]]の破片から頭を保護するために開発された。
 原型である兜自体は古代のシュメール文明から既に存在していたが、現在の物である歩兵用の軍用ヘルメットは、第一次世界大戦で砲弾や[[手榴弾]]、石の破片から頭を保護するために開発された。

 当初はこの用途で世界初のヘルメットであるフランス軍のM1915ヘルメットなどは鋼鉄製だったが、1970年代に歩兵の負担を軽減するためにケブラー繊維を何層も重ね樹脂加工し軽量化した物が登場し、80年代にはさらに改良されたドイツ軍のフリッツヘルメット型のPASGTヘルメットが採用された。この形状には後頭部を破片などから保護できるメリットがある。21世紀になって採用されたアメリカ陸軍のACH(Adovanced Conbat Helmet)では抗弾性が向上した他、鍔・耳部の装甲が減らされている。これはヘルメットと[[ボディアーマー]]と干渉したり、ヘッドセットの使用機会が増えたことによる((弊害もあり、防御範囲が狭まったせいで後頭部や頸椎の負傷が増加した。これに対し露出した後頭部から首にかけてネックパッドを追加している。))。一方でアメリカ海兵隊は形状変更せず、素材改良で抗弾性を保ったまま軽量化したLWH(Light Weight Helmet)を採用していた。
 防弾性能に関してはPASGTの時点では[[NIJ規格>ボディアーマー]]のタイプIIで拳銃弾に耐えられる程度であったが、抗弾性の向上したACHは.44マグナム相当のタイプIIIAに耐えられるようになった。さらに後継のECH(Enhanced Conbat Helmet)ではタイプIIIとなり、ライフル弾の阻止も可能となった。
 当初の素材はこの用途で世界初のヘルメットであるフランス軍のM1915ヘルメットのような[[プレス加工]]で製造された鋼鉄製であった。重い上に銃弾の直撃には耐えられなかったものの、砲弾の破片からの防御には大きな効果を発揮した。1970年代に歩兵の負担を軽減するためにケブラー(Kevlar)((1964年に登場した高強度のアラミド繊維))を何層も重ね樹脂加工し軽量化した物が登場し、80年代初頭にはアメリカ陸軍で研究開発されさらに改良されたドイツ軍のフリッツヘルメット型のPASGT(Personal Armor System Ground Troops)ヘルメットが採用された。この形状には後頭部を破片などから保護できるメリットがある。21世紀に入ると[[アメリカ陸軍]]のACH(Advanced Combat Helmet)に代表される装甲範囲を削減して軽量化したヘルメットの使用が広がった。元々はヘッドセットを多用するため歩兵用のヘルメットが着用しにくかった特殊部隊向けに開発された軽量ヘルメットであり、一般歩兵でもヘッドセット使用機会が増え、従来のヘルメットがボディアーマーと干渉する例もあったため一般歩兵向けにも採用された。また冷戦終結後、テロリストや反政府組織相手の非対称戦争が主流となり大戦期のような大規模砲撃戦の発生機会が減ったことも一因となっている。一方で防御範囲が減ったことで元々の目的である「破片防御」性能は旧来のものより劣っていると言われており、事実ACHでは後頭部や頸椎の負傷が増加したため防御用ネックパッドを後年追加している。また2022年に発生した[[ロシアによるウクライナ侵攻]]では正規軍同士の紛争だけあり近年稀に見る砲撃戦が繰り広げられているが、ウクライナ側に軍事支援として西側から供給された各種ヘルメットの中でも、防御範囲の狭い軽量タイプのヘルメットは砲撃で死傷しやすいと報告されている。
//21世紀になって採用された[[アメリカ陸軍]]のACH(Adovanced Conbat Helmet)では抗弾性が向上した他、鍔・耳部の装甲が減らされている。これはヘルメットと[[ボディアーマー]]とが干渉したり、ヘッドセットの使用機会が増えたことによる((弊害もあり、防御範囲が狭まったせいで後頭部や頸椎の負傷が増加した。これに対し露出した後頭部から首にかけてネックパッドを追加している。))。一方で[[アメリカ海兵隊]]は形状変更せず、素材改良で抗弾性を保ったまま軽量化したLWH(Light Weight Helmet)を採用していた。
 防弾性能に関してはPASGTの時点では[[NIJ規格>ボディアーマー]]のタイプIIで[[拳銃弾>口径]]に耐えられる程度であったが、抗弾性の向上したACHは.44マグナム相当のタイプIIIAに耐えられるようになった。さらに後継のECH(Enhanced Conbat Helmet)ではタイプIIIとなり、ライフル弾の阻止も可能となった。

 視認性減少の為に偽装網や迷彩ヘルメットカバーが用いられることがある。さらに擬装効果を出す際には、偽装網やヘルメットバンド、スリット付きのカバーに枝葉を差し込む手法が取られる。
 現代の軍用品では、[[ナイトビジョン>暗視装置]]のマウントが標準装備されることが多い。加えてアタッチメントポイントや[[マウントレール]]を持ち、ライト等のアクセサリーの追加ができるものも登場し、ミッション記録用にデジタルカメラを搭載したものや空挺作戦向けにゴーグルや酸素マスクを追加することもできる。
 警察系の特殊部隊のヘルメットには顔面を守るフェイスシールド(単にバイザーとも)が装備されることがある。このシールドは[[ストック]]付きの銃器を使う際には干渉するため、ハイマウントの光学照準器を用いるか、フェイスシールドの下を通せるヘルメットストック((B&T社の[[MP5>短機関銃/HK MP5]]用のものが日本含め世界的に使用されている))が装備される。
 視認性減少の為に偽装網や迷彩カバーが用いられることがある。さらに擬装効果を出す際には、偽装網やヘルメットバンド、スリット付きのカバーに枝葉を差し込む手法が取られる。
 現代の軍用品では、LWHなど[[ナイトビジョン>暗視装置]]のマウントが標準装備されることが多い。加えてアタッチメントポイントや[[マウントレール]]を持ち、LEDライト等のアクセサリーの追加ができるものも登場し、ミッション記録用にデジタルカメラを搭載したものや空挺作戦向けにゴーグルや酸素マスクを追加することもできる。標的になりやすい機関銃手向けに下顎部までの装甲を追加してフルフェイスヘルメットのような見た目となる追加装甲キットも開発されている。
 ドイツのウルブリヒトAM-95防弾ヘルメットなど警察系の特殊部隊のヘルメットには顔面を守るフェイスシールド(単にバイザーとも)が装備されることがある。このシールドは[[ストック>銃床]]付きの銃器を使う際には干渉するため、ハイマウントの[[光学照準器>照準器]]を用いるか、フェイスシールドの下を通せるヘルメットストック((B&T社の[[MP5>短機関銃/HK MP5]]用のものが日本含め世界的に使用されている))が装備される。
 
 なお、最近は[[プレイヤーアンノウンズ バトルグラウンズ]]や[[レインボーシックス:シージ>レインボーシックス]]でも有名なロシアの旧式フルフェイスヘルメット(それぞれAltyn、Maska-1)は外見が武骨であるためか高い防御力を持つ設定となっている。しかし素材が旧式のため現実での防弾性能は意外にも低く、GOST((ロシアの防弾規格))クラス2、NIJ規格ではIIIA相当でありライフル弾を防ぐ性能はない。
 なお、最近はゲームの「[[プレイヤーアンノウンズ バトルグラウンズ]]」や「[[レインボーシックス:シージ>レインボーシックス]]」でも有名なロシアの旧式フルフェイスヘルメット(それぞれAltyn、Maska-1)は外見が武骨であるためか高い防御力を持つ設定となっている。しかし素材が旧式のため現実での防弾性能は意外にも低く、GOST((ロシアなどCIS加盟国で採用されている標準規格。食品から工業製品、あるいは医療サービスなどほぼ全ての分野をカバーしており、防弾規格もこれにより規定されている))クラス2、NIJ規格ではIIIA相当でありライフル弾を防ぐ性能はない。

 第二次世界大戦やベトナム戦争を題材にしたメディア作品においては、よくヘルメットの顎紐を外しているのが見かけられる。単にビジュアル上の演出以上の意味合いはないが、当時ヘルメットが爆風で飛ばされたとき顎紐が首の骨を折ったり切断するといった迷信や規律に対する言い訳も存在したようである。
//これはヘルメットが爆風で飛ばされたとき顎紐が首の骨を折ったり切断すると言われていたためである。
//↑普通のヘルメットでも不快感を下げるために顎紐を外す程度は一般的な行為であり、これを理由に多くの人々が外していたという誤解になるためコメントアウト。

//このため現代のヘルメットは一定以上の力が掛かると顎紐が外れるようになっている。

 特殊な使用例として、身分証明のために国連のPKO部隊が着用している「ブルーヘルメット」がある。

 主なモデル例
|国|モデル名|配備開始|h
|日本|66式鉄帽|1966年|
|~|88式鉄帽|1988年|
|アメリカ|PASGT|1975年|
|~|ACH|2003年|
|~|LWH|2003年|
|~|FAST|不明|
|~|ECH|2013年|
|~|88式鉄帽2型|不明|
|アメリカ|PASGT (Personnel Armor System for Ground Troops((ボディアーマーと合わせた一式の名称)))|1975年|
|~|MICH (Modular Integrated Communications Helmet)|2001年 特殊部隊向け|
|~|ACH (Advanced Combat Helmet)|2003年 陸軍向け|
|~|LWH (Lightweight Helmet)|2003年 海兵隊向け|
|~|FAST (Future Assault Shell Technology)|不明 特殊部隊向け|
|~|ECH (Enhanced Combat Helmet)|2013年 陸軍・海兵隊向け|
|イギリス|G.S.Mk.6|1980年代前半|
|ドイツ|B-826ケブラー・ヘルメット|不明|
|~|ウルブリヒトAM-95防弾ヘルメット|不明|
|ロシア|Maska-1Sh|不明|
|~|6B7|2002年?|
|イスラエル|RBH103|不明|
|カナダ|CG634ヘルメット|不明|
|フランス|F2ヘルメット|1980年代|
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