*ドラムマガジン [#h82aa9bd]
#author("2023-11-16T15:07:29+09:00","default:user","user")
*ドラムマガジン / Drum magazine [#h82aa9bd]

 銃器に装填するマガジンをドラム型に改造し、飛躍的に装弾数を増加させたもので、形がドラムに似ているためこの名がつけられた。
 イタリアのスオミ機関銃が始めて採用し、その後[[PPSh41>USSR PPSh41]]や[[トンプソン M1928>トンプソン M1]]などに引き継がれ、現在のようになっている。また、現在のドラムマガジンには、主にCマグという通常型のドラムマガジン([[HK G36]]などで使われている)と、スイマグという[[HK MP5]]や[[コルトM4A1>コルト M4]]などで使われているドラムを二つ組み合わせたようなものとがある。構造は、始めマガジンに弾薬を込め、マガジン前方のゼンマイを巻けば、ゼンマイがドンドン弾薬を送り出してくれる、というものだ。
 ※例外はスイマグで、スイマグの場合弾薬を込めていけば自動でゼンマイも巻き上げられるので、
ゼンマイを巻く必要は無い(というかゼンマイ自体ついていない)。
 多数の弾薬を収める円筒型[[マガジン]]の総称。

 弾薬を銃へと送り込む動力源となるバネには、通常の[[箱型マガジン>マガジン]]ではコイルスプリングを用いているのに対し、ドラムマガジンは一般的にゼンマイバネを用いている。
 動力を溜める為のゼンマイの機構や巻くタイミング、弾の込め方には製品により違いがあり、主な方式としては以下の4種類がある。
#ref(CHG000-2.jpg,right,nolink,around,50%,Cマグ)
・Beta社のCマグ(画像参照)のように弾薬を込めると共にゼンマイも弾に押し下げられて巻き上げられる方式。
・[[スオミ M1931>短機関銃/スオミ M1931]]のように弾を込める前にゼンマイを全て巻く方式。
・[[トンプソン>短機関銃/オートオードナンス トンプソン]]のように全ての弾を込めてからゼンマイを巻く方式。
・[[RPK>USSR RPK]]のように数発分ずつゼンマイを巻いて弾を込めていく方式。

 大容量にも関わらず、箱型と比べてマガジンの全長ないし全高を抑えられ、射撃姿勢を低くできるメリットから、[[バイポッド]]等を用いた伏射を前提とする[[軽機関銃]]では、[[ベルト給弾式>弾帯]]に次ぐ給弾方式として用いられる。
 代表的なものはフィンランドの[[スオミ M1931>短機関銃/スオミ M1931]]、アメリカの[[トンプソン M1921,M1928>短機関銃/オートオードナンス トンプソン]]、ソ連の[[PPSh41>短機関銃/USSR PPSh41]]、ドイツの[[ルガー P08]]、[[ベルグマン MP18>短機関銃/ベルグマン MP18]](スネイルマガジン)など。戦後に開発されたものでは[[RPK>USSR RPK]]などの[[突撃銃]]ベースの軽機関銃に用いられている。
 近年の製品では、シンガポールの[[ウルティマックス100>CIS ウルティマックス100]]が、60連と100連のドラムマガジンを採用している。最近の潮流からは逆行しているが、このマガジンは「使い捨て」前提として軽量化されているのが特徴で、ウルティマックス自体の軽量化にも一役買っている。

 いっぽう、箱型に比べ、部品点数は多く構造も複雑で整備性は悪く、製造コストも高い。また組立時や装填時にゼンマイの巻きが規定よりも弱過ぎたり強過ぎたりすると給弾不良の原因となるため、扱いにも注意を要する。大きく幅を取ってかさばるため、携行や立射での保持にも支障があり、軍用の[[自動拳銃]]や[[短機関銃]]の制式装備としてはほとんど用いられなくなった。また機関銃や[[機関砲>対物火器]]の給弾機構としても第二次世界大戦の頃からベルト給弾式の信頼性が高くなった事もあり、装弾数に機械的な上限のあるドラムマガジンは採用例を大きく減らしている。こういった扱いの不便さもあって現在、軍・法執行機関でドラムマガジンを多用しているのは中国のみである。

 現代でもドラムマガジンの採用例が多い中国では、[[湖南軽武器研究所>中国北方工業公司]]が開発したLR2という[[ブルパップ]]型[[ボルトアクション]]方式[[対物狙撃銃>対物火器]]にまで装弾数5発のドラムマガジンを採用している。これは大口径で嵩張る[[12.7mm口径弾薬>口径]]を収めたマガジンがブルパップ銃の下方に突出する事で射撃姿勢に制約が生じてしまうのを、ドラムマガジンを採用する事でマガジンを小型化して抑制するのが目的としており、嵩張る代わりに大容量を得る事が目的として採用される事が多いドラムマガジンの採用例としては極めて希な例である。

 なお、第一次世界大戦前から戦間期までに作られた黎明期の[[軽機関銃]]で見られた円盤型のものは、パン(平鍋)マガジンと呼ばれる。これには給弾に用いる駆動力を銃側から受けるものと、内蔵するゼンマイ等で駆動するものの二種類がある。前者の例は[[ルイス機関銃>BSA ルイスMkI]]などで、銃のボルトの前後動に伴いカム機構とラチェットによって容器が回転しつつ、内部のスロープによって弾薬を機関部に送るようになっている。後者の例はソ連の[[DP機関銃>USSR DP]]などで、マガジン中央部に内蔵したゼンマイにより上蓋が回転し、上蓋の内側に並ぶ爪が弾を送り出すようになっている。
 弾頭を中心に向けて放射状に並べて弾薬を収める形態から、弾頭をほぼ並行に前方に向けて円筒状に並べるドラムマガジンと比べてはるかに嵩張ってしまうが、弾薬を並べた層を幾重にも重ねて大容量化する事が可能であり、前述のルイス機関銃では弾が2層に並んだ47発マガジンが標準的に用いられていたが、航空機搭載用には4層構造とした97発マガジンが用いられていた((試作まで含めれば400発マガジンまである。))。またさらに大容量のものとしてはフランスのMAC34という7.5mm口径の航空機搭載用機関銃では用途や搭載機種により100発、300発、500発のマガジンが用いられていた。
 しかしパンマガジンもドラムマガジンと同様にベルト給弾式の発展と共に廃れていった。

 発展形として、[[PP19ビゾン>短機関銃/イジェマッシュ ビゾン]]や[[PP90M1>短機関銃/KBP PP-90M1]]、[[キャリコシリーズ>短機関銃/キャリコ M900]]などが採用している、螺旋状に弾薬を装填するヘリカル(螺旋)マガジンが存在する。ドラムマガジンと比べて容器が細長く比較的かさばらないため、銃の保持や携行が容易な点で優れている。ただ、マガジンのサイズそのものは、20連30連の従来のボックスマガジンに比べれば大きいため、複数本のマガジンを携行するには向かない点はドラムマガジンと同様である。また、ヘリカルマガジンのバネは手巻き式になっており、使用前にバネを巻く必要がある。

 なお、ドイツの[[MG34>ラインメタル/マウザー MG34]]や[[MG42/MG3>グロスフス MG42]]に用いられているのは、しばしば混同されるがドラム状の[[弾薬ベルト>弾帯]]コンテナである。一方、MG34で使用される75連サドルドラムマガジンは給弾機構を内蔵する「マガジン」である。


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CENTER:このページの画像は[[Beta社>http://www.betaco.com/]]から転載しています。
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