ウェブリー&スコット ウェブリーピストル / Webley & Scott Webley Pistol 【自動拳銃】 †
ウェブリーピストルは、イギリスのウェブリー&スコット社が開発した、シングルアクション式の自動拳銃である。同社の銃器デザイナーであるウィリアム・ホワイトニングが設計を行った。
複数のバリエーションが存在し、モデルによって作動方式や安全機構、口径などに違いが見られる(詳細は下記の表を参照)。
ショートリコイルモデルは、発砲時に銃身が斜め後方に下降する「ドロップバレル・ロッキング」という独自のロッキングシステムを備えている。この閉鎖方式では、スライド上面がフラット状になっている(他モデルではアーチ状)。
安全機構として、マニュアルセイフティを備えたモデルと、グリップセイフティを備えたモデルの2種類がある。マニュアルセイフティはグリップ左上にあり、レバーが水平状態でロックがかかり、押し上げると解除される。スライドリリース機能は、マニュアルセイフティ付きモデルならセイフティレバーを押し上げることで機能し、無いモデルならグリップ左上のボタンで操作する。マガジンリリースレバーの位置は、弾倉底部、グリップ底部、トリガーガード後部など、モデルによって様々。
1903年にホワイトニングが設計を開始し、ショートリコイル式で.455ウェブリーオート弾を使用する試作モデル「M1904」を開発する。1905年には、作動方式をシンプルブローバックに変更し、小口径の.32ACP弾を使用する小型の「M1905」を開発。この銃はイギリス軍の制式拳銃トライアルに提出されたが、同時代のリボルバーを超える性能を発揮できず、結局採用は見送られた。しかし、1911年には改良モデルの「M1908」がロンドン警視庁ほか各警察機関に採用されている。
1910年には、再びドロップバレル・ロッキングによるショートリコイル式に戻した「M1910」を開発している。M1910の改良モデル「M1912」はイギリス海軍が"Mk.I ネイビー"、「M1913」はイギリス陸軍航空隊と王立騎馬砲兵が"Mk.I No.2"としてそれぞれ採用し、第一次世界大戦で使用した。しかし、これらのモデルは大柄で重い、グリップが握りづらい、当時使用していたコルダイト火薬(燃えカスが残りやすい)とドロップバレル・ロッキング(クリアランスがきつい)の相性が悪く、頻繁にジャムを起こす(この問題は、ニトロセルロース火薬の登場で解決)などの問題が多かった。配備は限定的で、戦後は再びリボルバーを制式拳銃に戻している。ただし、少数は警察機関や海外の植民地軍などで引き続き使用されていた。
作動に難のあった大口径・ショートリコイルモデルとは異なり、小口径・ブローバックモデルは民間市場向けに1920年初頭まで製造されていた。
バリエーション †
モデル | 特徴 |
M1904 | .455ウェブリーオート弾を使用する試作モデル ショートリコイル 外装式ハンマー。マニュアルセイフティ 弾倉底部にマガジンリリースレバー |
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M1905 M1908 | M1904の.32ACP弾モデル シンプルブローバック |
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M1906 M1907 | M1905の.25ACP弾モデル 全モデルの中で最も小型サイズ |
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M1909 | M1905の9mmブローニングロング弾モデル |
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M1910 | M1905の.38ACP弾モデル ショートリコイル。ドロップバレル・ロッキング 内蔵式ハンマー マニュアルセイフティ又はグリップセイフティの2種類 .380ACP弾/ショートバレルの少数生産モデルもあり |
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M1911 | M1905の.22ロング弾モデル 競技用のロングバレル 薬室に1発のみ装填するシングルショット式 |
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M1912 M1913 | M1910の.455ウェブリーオート弾モデル ただし、外装式ハンマー・グリップセイフティ グリップ底部にマガジンリリースボタン リアサイトはM1912は固定式、M1913は調節式 弾倉にマガジンキャッチ用の穴が2つある*1 Mk.I No.2にはショルダーストック付きの少数生産モデルもあり |
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M1922 | 9mmブローニングロング弾 シンプルブローバック 外装式ハンマー。マニュアルセイフティ トリガーガード左側後部にマガジンリリースボタン |
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