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H&K G36(HK50) 【突撃銃】 †
モデル | 全長(伸長時) | 重量 | 口径 | 装弾数 | 発射速度 | 発射形式 | 製造国 |
G36 | 758(999)mm | 3.63kg | 5.56mm×45 | 10/30/100 | 750発/分 | S/F S/2/F | ドイツ |
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G36K | 615(860)mm | 3.0kg |
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G36C | 500(720)mm | 2.8kg |
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SL8 | 980mm(固定ストック) | 3.9kg | 5.56mm×45 | 10 | − | S |
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1990年代にドイツのH&K社が開発した突撃銃。1997年にドイツ連邦軍に採用された。
H&K社は西ドイツ時代の1970年代から、G3に替わるドイツ連邦軍の次世代制式小銃としてG11の開発を行っていた。G11はドイツが再統一された1990年には生産可能な段階に入っていたのだが、複雑な機構を採用したための問題も多く、また翌1991年のソ連崩壊による冷戦終結などの世界情勢の変化もあって、ドイツ連邦軍はG11の採用をキャンセルする。
時勢に乗り遅れた連邦軍は、新NATO制式弾である5.56mmのSS109弾を使用する方針へ転換したものの、NATO共同作戦時にフランスのFAMASを使うことを余儀なくされるなど、早急にG3に替わる後継銃を必要としていた。これに対しH&K社は、G3の派生形である5.56mm小銃「HK33」などを提案したが、連邦軍は次期制式小銃としてより高い機能性・軽量さを求めたため、「シンプルかつ信頼性の高い突撃銃」をコンセプトとした新型銃の開発に踏み切った。
H&K社内で「HK50」と呼ばれた新型銃のプロトは、候補銃であったオーストリアのステアー AUGと共にトライアルにかけられ、これに勝利した。1995年には生産モデルと同等の最終バージョンが完成し翌年から生産がスタートした。1997年には「G36」の名称が与えられ、配備が開始された。
G36はH&K社が長らく重用してきたローラーロッキングによるディレイドブローバック方式から、現在の主流であるシンプルなターンボルトロッキングとガスオペレーションに変更。フレームはプラスチックを多用して軽量化に努めている。マガジンも半透明のプラスチック製として残弾数を一目瞭然にし、ケースと一体成型のラッチを設けてクランプやクリップ無しにマガジン同士の連結を可能としている。ただしマガジンは独自規格であり、M16互換のSTANAGマガジンは使用できない。
G3シリーズと異なり、マガジンの最終弾発射後にボルトは自動で後退位置にホールドされる。またコッキングハンドルを引き切ったままトリガーガード内に設けられたボルトキャッチボタンを押すことで、ボルトを手動で後退位置にホールドすることもでき、いずれの場合もハンドルを引き切ることでボルトがリリースされる。
コッキングハンドルはボルト連動式で、左右どちらからでも操作可能なようレシーバー上面に設けられている。ハンドルが左右いずれにも折れ曲がる仕組みで、手を放すとスプリングによって中立位置に復帰する。
キャリングハンドルは、光学サイト*1内蔵のものと、上面をマウントレールとしたタイプが用意され、いずれにも必要に応じてナイトビジョンサイトが装備可能である。
G3シリーズと異なりOTB(上陸作戦)遂行能力も備え、防錆不要のプラスチック部品の多用により耐候性・生産性も高く、安定した精度と信頼性を持つ、シンプルながら優れた性能を持つ完成度の高い突撃銃となった。
G36はドイツ連邦軍のみならず、対テロ専門部隊であるGSG9を含む国境警備隊にも配備されている。ドイツ国外では、スペイン軍やフランス国家警察のRAIDやGIPN、イギリス警察などが制式採用し、イラク派遣やPKO/PKF、対テロ作戦や凶悪犯逮捕作戦などの際に実戦投入されている。アメリカでもごく一部ではあるが、SWATにMP5に替わる突入用装備として配備された。
現在では後発のHK416の採用も増えつつあるものの、最新のアジャスタブル・ストックモデルや、これを装着した旧モデルなどの使用例も見られる。
一方でアメリカのM16同様、プラスチックを多用した外観は一部の兵士からは不評を買い、信頼性で劣るなどとも噂された。当初はあくまで噂でしかなかったものの、2000年代の中東地域への派兵を経てからは、高温の地域では連射後に照準(ゼロイン)が狂うという事例が報告されるようになった。調査を行ったドイツ連邦軍は、連射による銃身の過熱によってレシーバーの銃身基部付近が変形し命中精度が低下するとの報告を出し、2014年6月に発注を停止している。
2015年にはドイツ政府がH&K社に賠償責任を問う訴訟を起こし、一大スキャンダルに発展した。翌2016年には、G36は納入契約時の要求仕様を現在も満たしており、突撃銃としての機能に問題はないとしてH&K側が勝訴している。しかしドイツ連邦軍の方針は変わらず、2017年には次期制式ライフルコンペティションが発表され、H&K社は本銃及びHK416で培ったノウハウを活かしたHK433を提示している(なお、2020年9月の段階ではG36後継としてハーネル社のMK556(ガスピストンAR15クローン)が指名されている)。
2014年には新たな民間向けモデルとして、ヨーロッパ向けの「HK 243」とアメリカ市場向けの「HK 293」が登場している。以前の民間モデルSL8と異なりC、K、S(スポーター、標準モデル)、L(ロングバレルモデル)の4種類のバレル長と2種類のフォールディング・ストックをラインナップに備え、STANAGマガジンが使用可能となっている。また、これと同時にAR15向けにG36風の半透明マガジンもH&Kから発表されている。
各種バリエーション、他 †
モデル | 解説 |
G36 | 基本型。ドイツ軍バージョン(英:standerd German army version)とも。 キャリングハンドル内蔵のスコープの倍率は3倍。その上にコリメーターサイトを載せたモデルや、 ピカティニーレールを追加したモデルも採用されている。 |
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G36E | G36の輸出(Export)版。キャリングハンドル内蔵スコープの倍率は1.5倍 |
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G36V | G36Eの現行型 キャリングハンドル上面をマウントレール化し、内蔵スコープを廃止 折畳みに加え、伸縮も可能なVストック |
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G36K | 機動性の向上などを目的として銃身を短くしたカービンタイプ。 「K」はドイツ語で「短い」という意味のKurz(クルツ)から。 |
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G36KE | G36Kの輸出版。G36Eと同様の輸出型1.5倍スコープ内蔵キャリングハンドルを装備。 |
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G36KV | G36KEの現行型、もしくはG36Vのショート版。 |
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G36C | 最も銃身が短い、短機関銃サイズのモデル。「C」はコンパクトの意。 初期はCommandoの略としていたが、既にコルト社の突撃銃としてCommandoが存在していたため、Compactに変更された。 |
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G36A2 | ドイツ陸軍仕様のG36をアップグレードしたモデル。 光学サイト内蔵のキャリングハンドルを、従来のデュアルコンバットサイトから、スコープ上面にピカティニーレールを設けたものとし、 カールツァイス製Z-ポイントを標準装備。 ストックは、ボディアーマーやタクティカルベストの着用時に支障が出ないよう、G36Cと同じショートタイプに変更。 側面と下部にピカティニーレールを有する新型ハンドガードを装備。 エリコン製LLM01用の切り替えスイッチ付きグリップを装備。 |
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MG36 | G36をベースに、分隊支援火器としたモデル。ベータ社のCマグやバイポッドが付属している。 ドイツ国内版のキャリングハンドル&3倍スコープ+コリメーターサイトを装備。 |
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MG36E | MG36の輸出版。輸出版の1.5倍スコープ内蔵キャリングハンドルを装備。 |
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SL8 | アメリカの民間市場向け輸出型(スポーターモデル)。 銃身はフラッシュハイダー無しのストレートタイプ 固定式のサムホールストック ハンドガードに放熱用の穴が無い。 本体カラーがライトセージ。 |
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SL8-6 | SL8のブラックカラー版。こちらはG36と同じ片側6つの放熱穴がある。 |
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R8 | H&K オーストラリアが独自に設計したSL8の改良版。外観はSL8-6とほぼ同じ。 |
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SL9SD | SL8をベースに、狙撃銃として再設計されたもの。専用の7.62mm×37弾を使用する。 |
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FX-05 シウコアトル | メキシコで開発された突撃銃。特徴がG36に酷似していたため違法コピーではないかと当時話題になった。 2007年2月にメキシコ国防省(SEDENA)とH&K側が会談を行い、 H&K側が「あくまで異なる銃器である」という見解を示したため、問題は解消された。 現在FX-05はシルエットからの誤解を避けるため、 キャリングハンドルを廃し、レシーバー上のマウントレールに光学照準器を装着している。 |
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外部リンク †
・H&K G36 ムービー1
・H&K G36 ムービー2
※あまりに頻繁に繰り返される上に結論の出しようがない話題なので、コメント欄で「G36」「XM8」「HK416」のいずれが優れているか/今後普及するかといった話題はお控え下さい