ライフルグレネード / Rifle grenade

 ライフル(小銃)を発砲する際の発射ガスや、弾丸のエネルギーを利用して投射するグレネード(擲弾)の総称。日本語では「小銃擲弾」と訳される。
 登場したのは第一次世界大戦で、当初は手榴弾に銃口に突っ込むための棒を着けただけの、簡便な「スティック型」が主流だった。これは銃身内の圧力が過大になって危険なためにやがて廃れ、その後銃口に取り付けたカップ型のランチャー(発射器)にグレネードを入れて発射する「カップ型」、同じく銃口に取り付けたランチャーに被せるようにグレネードを装着する「ソケット型」へと発展し、弾薬も専用設計のものが製造されるようになった。
 現在は、西側諸国ではNATO標準の外径22mmのフラッシュハイダー(フラッシュサプレッサー)にスプリングを組み込み、専用のランチャーを使用しなくともフラッシュハイダーに直接ライフルグレネードを装着・発射できるようになっている。旧ソ連を筆頭とする東側・共産圏諸国ではそこまでの標準化は成されなかったが、ユーゴスラビアのツァスタバM70や、ポーランドのKA wz.88など、独自の改良でランチャーを標準装備としたバリエーションも製造された。
 難点としては、発射の際に空包が必要(=弾薬を交換しなければならない)、発射時の反動が強く「肩つけ」での発射が困難(発射の際は、銃床を地面につける)、ガス圧利用の自動火器ではガスカットしないと作動不良を起こす、などがある。しかし空包の再装填に関しては、実包の弾頭をグレネード内で受け止めて発射する「トラップ式」の登場で解消されている。

 現在は「ハイ・ロー・プレッシャー薬莢」を用いた専用の弾薬、発射器を用いるグレネードランチャーが主流となっているが「(NATO標準規格であれば)どの銃からでも発射できる」「アッド・オン型のグレネードランチャーのように銃の照準特性が変化しない」などの長所もあり*1、フランス、イタリア、日本など、現在もライフルグレネードを重視している国・軍も少なくない。
 中でも、第二次大戦当時、『擲弾筒』を大量に投入した日本が、戦後は歩兵用のグレネードランチャーに背を向けている点は興味深い。

 発射器の口径に左右されないために弾頭設計の自由度が高く、様々な種類のグレネードが用意されているのも長所の一つで、一般的な対人用榴弾や対戦車擲弾(HEAT弾)の他、ドアエントリーに特化したイスラエル・ラファエル社製の「サイモン(SIMON)」なども提供されている。暴徒・暴動鎮圧やデモ・コントロール用の低殺傷弾薬(催涙弾など)も数多く、こちらは軍事用では廃れた「カップ型」のランチャーを用いるものも多い。
 変わったところでは、ワイヤーやロープを打ち出す「ロープ銃」にも、ライフルグレネードと同じ原理が用いられる。例えば洋上補給などの際、まず補給を受ける艦から補給艦に向けて、ロープ銃(船の場合は、特に「舷銃」と呼ぶ)の銃口に取り付けたランチャーから、錨状の金具に結んだロープを発射し、これをたぐる形で補給艦・被補給艦のラインを結ぶ。
 このロープ銃は、抵抗の強いロープやワイヤーを遠方に打ち出すため、発射ガスのエネルギーが大きいショットガンや、M14のような比較的大型のライフルが用いられるケースが多いようだ。メディア作品では、映画『S.W.A.T.』の訓練シーンで、ショットガンを用いてロープを張るシーンが見られる。

 さらには、第二次大戦当時、ナチス・ドイツ軍が前線で宣伝ビラを撒くのに使用した「プロパガンダ・グレネード」、完全なレクリエーション用として、ゴルフボールを発射して遊ぶ「ゴルフボールランチャー」といった変わり種も存在する。


最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • グレネードランチャーの飛距離は200mだそうですがこれの飛距離はどのくらいになるのでしょうか? -- 2016-03-22 (火) 23:19:06
  • 物によりけりですね。大体200〜300mですがロケットブースター付きで500mなんてのもあります。もっとも40mmグレネードも今は物によっては300〜800mぐらいは飛びますが。 -- 2016-03-23 (水) 00:06:17
  • ライフルグレネードってM320みたいなアンダーバレルグレネードランチャーつけた状態で撃てるのでしょうか? そもそもアンダーバレルグレネードランチャーあるならそっち使えよって話ですが、興味が湧いたので -- 2016-12-28 (水) 22:42:48
  • 三八式の空砲の火薬は実包の1/15だから175J、重力加速度9.8m/s^2、空気抵抗は無いと仮定する。370gの40ミリ対戦車擲弾を発射するとすれば、初速は31m/sで96メートル位 -- 2023-12-27 (水) 16:48:05
  • 実際は50メートルが射程とされていたが、対戦者用だから平射じゃないと当たらなかったのだろう -- 2023-12-27 (水) 16:51:49
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*1 一方でランチャーのような連発性や自動性を持たせられない短所もある。

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Last-modified: 2017-11-22 (水) 07:45:29 (2340d)