ドラムマガジン / Drum magazine

 多数の弾薬を収める円筒型マガジンの総称。

 弾薬を銃へと送り込む動力源となるバネには、通常の箱型マガジンではコイルスプリングを用いているのに対し、ドラムマガジンは一般的にゼンマイバネを用いている。
 動力を溜める為のゼンマイの機構や巻くタイミング、弾の込め方には製品により違いがあり、主な方式としては以下の4種類がある。

Cマグ

・Beta社のCマグ(画像参照)のように弾薬を込めると共にゼンマイも弾に押し下げられて巻き上げられる方式。
スオミ M1931のように弾を込める前にゼンマイを全て巻く方式。
トンプソンのように全ての弾を込めてからゼンマイを巻く方式。
RPKのように数発分ずつゼンマイを巻いて弾を込めていく方式。

 大容量にも関わらず、箱型と比べてマガジンの全長ないし全高を抑えられ、射撃姿勢を低くできるメリットから、バイポッド等を用いた伏射を前提とする軽機関銃では、ベルト給弾式に次ぐ給弾方式として用いられる。
 代表的なものはフィンランドのスオミ M1931、アメリカのトンプソン M1921,M1928、ソ連のPPSh41、ドイツのルガー P08ベルグマン MP18(スネイルマガジン)など。戦後に開発されたものではRPKなどの突撃銃ベースの軽機関銃に用いられている。
 近年の製品では、シンガポールのウルティマックス100が、60連と100連のドラムマガジンを採用している。最近の潮流からは逆行しているが、このマガジンは「使い捨て」前提として軽量化されているのが特徴で、ウルティマックス自体の軽量化にも一役買っている。

 いっぽう、箱型に比べ、部品点数は多く構造も複雑で整備性は悪く、製造コストも高い。また組立時や装填時にゼンマイの巻きが規定よりも弱過ぎたり強過ぎたりすると給弾不良の原因となるため、扱いにも注意を要する。大きく幅を取ってかさばるため、携行や立射での保持にも支障があり、軍用の自動拳銃短機関銃の制式装備としてはほとんど用いられなくなった。また機関銃や機関砲の給弾機構としても第二次世界大戦の頃からベルト給弾式の信頼性が高くなった事もあり、装弾数に機械的な上限のあるドラムマガジンは採用例を大きく減らしている。こういった扱いの不便さもあって現在、軍・法執行機関でドラムマガジンを多用しているのは中国のみである。

 現代でもドラムマガジンの採用例が多い中国では、湖南軽武器研究所が開発したLR2というブルパップボルトアクション方式対物狙撃銃にまで装弾数5発のドラムマガジンを採用している。これは大口径で嵩張る12.7mm口径弾薬を収めたマガジンがブルパップ銃の下方に突出する事で射撃姿勢に制約が生じてしまうのを、ドラムマガジンを採用する事でマガジンを小型化して抑制するのが目的としており、嵩張る代わりに大容量を得る事が目的として採用される事が多いドラムマガジンの採用例としては極めて希な例である。

 なお、第一次世界大戦前から戦間期までに作られた黎明期の軽機関銃で見られた円盤型のものは、パン(平鍋)マガジンと呼ばれる。これには給弾に用いる駆動力を銃側から受けるものと、内蔵するゼンマイ等で駆動するものの二種類がある。前者の例はルイス機関銃などで、銃のボルトの前後動に伴いカム機構とラチェットによって容器が回転しつつ、内部のスロープによって弾薬を機関部に送るようになっている。後者の例はソ連のDP機関銃などで、マガジン中央部に内蔵したゼンマイにより上蓋が回転し、上蓋の内側に並ぶ爪が弾を送り出すようになっている。
 弾頭を中心に向けて放射状に並べて弾薬を収める形態から、弾頭をほぼ並行に前方に向けて円筒状に並べるドラムマガジンと比べてはるかに嵩張ってしまうが、弾薬を並べた層を幾重にも重ねて大容量化する事が可能であり、前述のルイス機関銃では弾が2層に並んだ47発マガジンが標準的に用いられていたが、航空機搭載用には4層構造とした97発マガジンが用いられていた*1。またさらに大容量のものとしてはフランスのMAC34という7.5mm口径の航空機搭載用機関銃では用途や搭載機種により100発、300発、500発のマガジンが用いられていた。
 しかしパンマガジンもドラムマガジンと同様にベルト給弾式の発展と共に廃れていった。

 発展形として、PP19ビゾンPP90M1キャリコシリーズなどが採用している、螺旋状に弾薬を装填するヘリカル(螺旋)マガジンが存在する。ドラムマガジンと比べて容器が細長く比較的かさばらないため、銃の保持や携行が容易な点で優れている。ただ、マガジンのサイズそのものは、20連30連の従来のボックスマガジンに比べれば大きいため、複数本のマガジンを携行するには向かない点はドラムマガジンと同様である。また、ヘリカルマガジンのバネは手巻き式になっており、使用前にバネを巻く必要がある。

 なお、ドイツのMG34MG42/MG3に用いられているのは、しばしば混同されるがドラム状の弾薬ベルトコンテナである。一方、MG34で使用される75連サドルドラムマガジンは給弾機構を内蔵する「マガジン」である。


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最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • ↑ マイナーだけど普通にあるよ。 -- 2015-09-18 (金) 19:46:19
  • こんなドラムマガジン専門なメーカーもありますよ→ttp://www.xproducts.com/magazines-and-products -- 2015-09-19 (土) 01:41:21
  • パンマガジンの記述が誤っていたので修正。確かにルイスは弾が並んだだけの箱だけど、DPやブレンのパンマガジンはゼンマイ駆動なのやな。 -- 2018-09-04 (火) 00:17:35
  • 現代の軍隊における採用例(QBB-95)を追加。一般部隊の銃にドラムマガジンを今も配備してる国、他にもありますかね。RPK-16も入れるか迷いましたが配備状況が未だ途上のようなので見送りましたが。 -- 2019-12-05 (木) 03:00:02
  • まぁそもそも戦前は広く使用されていたことや最初のドラムマガジンなど、経緯的な解説が大分抜けてますからその辺も含めてその内追記という感じですかねぇ。 -- 2019-12-05 (木) 13:18:44
  • ロボコップ2でM16A2とK1に装着されたドラムマガジンが登場しましたがあれは映画オリジナルのものなのでしょうか? それとも実際の製品を撮影用に改造したものなんでしょうか? IMDbやIMFDBを見ても分かりませんでした -- 2021-07-08 (木) 18:27:07
  • MWG companyの90rdマガジン。 ttps://www.mwgco.com/MWG-223-90A.html -- 2021-07-11 (日) 17:25:02
  • 今頃になってしまいましたがありがとうございました。劇中、透明な部品がチラッと見えるシーンがありましたがデフォルトで背面が透明で残弾が分かるようになっているのですね。しかも現在も販売されているとは驚きました。息の長い製品ということはきっと、ドラムマガジンとしては成功した部類の製品なんでしょうね。お心遣いに改めまして、感謝申し上げます。ありがとうございました。 -- 2021-08-19 (木) 21:51:41
  • MWGの90連ドラム、珍しい内部まで全てダブルカラムのドラムマガジンなのでAR15マガジン互換の大口径弾(.50 Beowulfや.458 SOCOM)用の大容量マガジンとして使えるという変わった特徴があったり。30発前後入るらしいですね。ラノベとかで出て来ると面白そうなんですが、活用している作品は果たしてあるのでしょうか・・・ -- 2021-08-21 (土) 21:37:17
  • 内容を整理するついでに、信じられない事にドラムマガジンを大容量目的ではなく小型化を目的としてボルトアクション銃に採用したLR2なる銃について追記。まあロータリー式マガジンなんてのもあるので、よくよく考えたら有りと言えば有りなのかも? -- 2021-10-15 (金) 03:07:11
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*1 試作まで含めれば400発マガジンまである。

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Last-modified: 2023-11-16 (木) 15:07:29 (159d)