ガスオペレーション / Gas-operation

 自動小銃などで採用されている自動装填機構のひとつ。
 発砲で生じる燃焼ガスの圧力を一部利用して、チャンバーの開放と薬莢の排出を行い、次弾を装填する方式。バレル内の穴などから発射ガスの一部を導き、バレルと平行に配されたバイパスやピストンを通じて、発砲のエネルギーの一部をボルトへと送り込んでこれを後退させるというもの。

 ブローバック方式のように発砲の反動を利用する場合、強力な弾丸であればあるほど、ボルト(或いはスライド)の後退スピードは増す。よってそれらが破損する危険も当然増すので、反動のショックやスピードを抑えるためにボルト/スライドを閉鎖するスプリングをより強いものとしたり、或いはボルトや火器本体をより重くより頑丈なものとしたりする必要がある。だが、あまり強いスプリングでは、初弾を送るさいにボルト/スライドを手動で引くことが困難となるうえボルトの前進スピードは増し、頑丈だが重すぎるボルトや火器は個人での携行が困難となる*1
 しかし、ガスオペレーションの手法なら、構造はブローバックよりやや複雑となるが、ボルト/スライドの開放に必要なエネルギーのみを取り出すことが出来るので、むやみにスプリングなどを強くする必要はなくなり、使用者が操作するさいの負担は軽くなる。ガスオペレーションが、デザートイーグルのような大口径自動拳銃や自動小銃などの強力な弾丸を使用する銃に採用されている所以である。

 ガスオペレーションには、ショートストローク、ロングストローク、ガストラップといったピストンを介する方式と、ガス直噴方式の四つが存在する。なお、ピストンを介さないM16などに採用されているガス直噴式のものは、(銃そのものの数はともかく)少数派である。
 ショートストローク-ガスピストン方式は、古くはSVTG43M1カービン。第二次大戦後にはM14FALAR18 。近年はG36SCARなど、最新のアサルトライフルでも採用されている方式である。ピストンとボルトグループはそれぞれ独立しており、発射ガスで押し出されたピストンが、更にボルトグループを蹴り出すという仕組みだ*2。機構は後述のロングストロークに比べ複雑だが、駆動に必要なエネルギーや反動が小さくて済むという利点がある。
 ロングストローク-ガスピストン方式は、AK47M1ガーランドが採用している、ボルトキャリアに固定されたオペレーションロッド(もしくはピストン)をガスで駆動するシステムである。ロッドが重く慣性モーメントが大きいため反動が大きくなるものの、構造がシンプルで頑健な点で優れている。 
 またガストラップは、開発段階のM1ガーランドが採用していたものである。銃口付近にトラップを設け、マズルブラストを利用してガスピストンを動作させる仕組みだったが、ものにならず、結局ロングストローク-ガスピストン方式に落ち着いたという経緯がある。

 これらガス圧利用方式では、「ガス規制子」という絞りを掛ける機構を採用する例がある。銃の動作に必要なエネルギーの量は銃本体の作動機構内部の汚れや歪みで変化し、また弾薬の燃焼で発生するエネルギーも、装薬の量や燃焼速度、弾自体の製造品質によって変化する*3ことから、発射ガスの取り出し、もしくは余剰ガスの排出量を調節することで、作動に必要なガス圧に最適化する*4ための機構である。特に機関銃のようなフルオートマチック射撃が可能かつ、安定した持続射撃が求められる火器に設けられる。
 ガス規制子を採用していないガスオペレーションの火器も多く存在する。AKM16がその例で、多くの発射ガスを引き込み高めのガス圧を得ることで動作信頼性をあげる設計となっている。代償としてAKではボルトの後退速度が速くなり過ぎて機関部後端への衝突時の振動や負荷が大きく耐久性と連射時の射撃精度を損ねており、M16ではボルトキャリアにガスシリンダーを有する設計上、排莢孔から余剰ガスを排出するため、左利きの射手の場合は余剰ガスが射手の顔面近くに噴出してしまう他、減音器を使用した際にはチャージングハンドルの隙間から射手の顔面に向けて余剰ガスが噴出してしまう場合がある。


最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • だとしたら、AK105やAKS74Uは架空銃ということに。 -- 2012-09-18 (火) 13:43:21
  • ガスがピストンヘッドに到達するまでの距離はショート/ロングとは関係ないから、確かに最後の文はよく分からんな。名前の由来はピストンの後退量であながち間違ってないんじゃない? -- 2012-10-12 (金) 11:11:09
  • 銃身を短くすると自ずとガス圧を得辛くなるため、回転が悪くなることはあるようです。AKS74Uなんかはハイダーにガス室設けて作動性を確保しているようですね。当然ですが、ハイダーを外しても作動不良の確率が上がるだけで撃てなくなるわけではありません -- 2012-10-14 (日) 00:40:05
  • 最後の一文が意味不明だったので消しました。 -- 2012-10-22 (月) 02:38:47
  • 前から疑問だったんだけどガス圧で作動させてるってことは、あたり一面が燃えてる所で撃つと危険ってこと? -- 2016-03-18 (金) 14:50:35
  • ガス圧っていっても別に可燃性ガスを使ってるって意味じゃないぞ。 -- 2016-03-18 (金) 15:32:05
  • なるほど。というか、そりゃそうですよね。 -- 2016-03-18 (金) 16:13:16
  • 「ガス」=「火薬が燃えたときに出る気体」って事だからね。 -- 2016-03-18 (金) 18:33:46
  • 上銃身下ピストンの銃とその逆と、どっちが反動大きくなる? -- 2017-04-29 (土) 20:40:31
  • 反動自体の大きさには関係ない。どちらでも同じ。反動に対する耐えやすさは曲銃床であれば下の方が耐えやすい(銃口を上下どちらかから引っ張るのを考えてみればよい)。 -- 2017-04-29 (土) 22:28:25
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*1 エリコン20mm機関砲など、乗り物に固定される火器の場合はこうした制限を(あまり)受けないことから、小火器でいうところのストレートブローバックは大口径機関銃/砲にも用いられている。一般に「APIブローバック」と説明される機構がそれである。
*2 ビリヤードや衝突球の仕組みと一緒で、ピストンは衝突した時に運動エネルギーをボルトグループに受け渡して停止し、ボルトグループはその慣性によって後進する。結果としてピストン自体の移動距離はごく短いものとなる。
*3 この他にも減音器などのマズルデバイスの使用によって動作機構に伝わるエネルギーの量が変化する場合がある。
*4 FALなど一部の銃では絞りではなく、引き込んだ発射ガスから捨てる量を調整する事で、自動装填機構に伝達するエネルギーの量を加減するようになっている。

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Last-modified: 2022-11-22 (火) 13:52:20 (520d)